動物園

女たちと動物園に行ってきました。

私の妻であるK子と、インターネットの友だちであるM子という女といっしょに行ってきました。この日、M子とはインターネットの外で初めて会うことになるため、以前の私であれば、かなり緊張していたはずですが、今の私は結婚して妻以外の女にモテる必要がなくなりましたから気楽なものでした。

 M子はブログに動物の写真をアップすることを趣味にしている女です。きっと動物が好きなのだろうと考え、私は上野動物園で会うことを提案しました。しかし、上野に現れたM子は開口一番「動物興味ないで」と言ったのです。私はあっけにとられてしまい、強張った笑顔を作って「え?動物興味ないんですか?」と言うことしかできませんでした。

土曜日の上野動物園は、それなりに混雑しており、入場券を買うためには行列に並ばなければなりませんでした。入場券売り場の長い行列を見た瞬間、私の体は硬直し、激しい動悸に襲われました。ある種の女を行列に並ばせると、突然ヒステリーを起こして暴れるケースがあるからです。しかし、M子は特に変わった様子もなく、最後まで落ち着いて列に並んでくれたので安心しました。

動物園に入場すると、真っ先にパンダの檻へと向かいました。動物園の人気者であるパンダの檻の前は酷く混雑しており、私は人ごみの中にいる間、ずっとお尻のポケットに入れてある財布を押えていなければなりませんでした。そうしておかないと財布をスラれるからです。

 

「つとむくんパンダに勝てる?」K子はパンダやゴリラなどの大型の動物を見るたびに、私がその動物に勝てるか勝てないかを尋ねてきました。こんな会話を人に聞かれたら困るのでやめてほしいと思いましたが、結婚生活を円満にするためには我慢が必要です。私は小声で「パンダには勝てないよ。腕の太さが違うだろ?」と答えました。

上野動物園はとても広く、複雑に入り組んでいました。女たちは地図が読めない生き物なので、私が園内マップ見て指示を出してやらなければなりませんでした。私が「どうやら、あっちのほうにライオンやゴリラがいるみたいですよ」と言うと、M子は「ドールもおるで」と言いました。私はドールがなんなのか知らなかったので、素直に「ドールってなんですか?」と尋ねました。するとM子は「知らん」と冷たく言い放ったのです。私は開いた口が塞がりませんでした。この女は一度ならず二度までも、ひとまわり以上も年上である私をおちょくったのです。しかし、私はグッと堪えて強張った笑顔を作り「え?ドール知らないんですか?」と言ったのです。その後、ドールの檻の前を通った時に、ちょっと中を覗いてみたところ、藪の中で犬がウロウロしていました。

その後も三人で時々ひとことふたこと言葉を交わしながら動物を見ました。動物園を一周する頃には、もうすっかり夕方になっており、そろそろ腹もすいてきていました。そこで、女たちに「晩御飯どうする?なにが食べたい?」と相談を持ちかけました。すると女たちは「なんでもいいよ」「男なんだからサッサと決めなよ」などと一方的に私を責め立ててきたのです。常識的に考えて、今日初めて会ったばかりの、しかも、ひとまわり以上も年上の男に対して、こんな人をバカにするようなことを言おうものなら、この女は頭がおかしいのではないかと思われるでしょう。しかし、私たちは以前からインターネットでお互いのブログを読んでいた仲なので、少しくらいおちょくられても、笑って許すことができるのです。